受験に悩む女子高生に進路指導をした話。

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いよいよ今年度のセンター試験も1ヶ月を切った。年末年始、受験生にとって人生を左右する重要な時間が流れている。

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誰しも通る思春期の悩み

知り合いの娘さんで今年受験生の女の子がいる。

中2の時から知っているのだが、今も昔も変わらず明るくてまっすぐで個性あふれる子供だ。ちょうど高校受験のとき、思春期ならではの進路の悩みを抱えていた。先生や友達、親のいうことがそれぞれ違いすぎて、本人の中で自分の思いをどうはっきりさせればいいのかわからず悩んでいた。

中3の10月、久しぶりに会ってみると、すっかり表情が曇っていて「もう高校に行かなくていい」「中学卒業したら働く」といっている。ただ本音ではないわけで、本当の志望校はどこなのか、成績や得意・不得意教科も含めて話を整理してあげると、すっかりモチベーションを取り戻してくれた。受験までの短期間で成績を一気に伸ばし、結果として先生からはまず合格できないだろうといわれていたそのまちのトップの進学校に入学した。

中2でときどき話し相手になっていた頃は「友達と仲良くできるのかな」とか「彼氏ができるのかな」とかかわいい悩みを相談してきて、答えに困った質問も多かった。「今後もしどうしても大変なときがきたら、必ず助けにきてね」といわれたりしたことも懐かしい。

ただ、私の場合、大人としての意見であると同時にちょっとした直感も使って答えてしまうので、このままの感じだと本人の成長にとっては好ましくないことなのかもと心配になっていた。そんな矢先、知り合いから「娘から、もう頼ってたら甘えてしまうから、相談しないようにするって言ってたよ」と聞いて、非常に感心した記憶は鮮明だ。

友達から家族写真入りの年賀状が届いても、子供だけで本人の姿がないことは多い。やっぱり友達の今の姿が知りたいわけで、正直子供さんの成長にはあまり興味がないのがほとんどだ。しかし、ときに友人知人のつながりよりその子供さんとのご縁を深く感じるときがある。出会ったとき、懐かしい感覚や自分ができることがあればサポートしなければいけないと思ってしまう責任感だとか、理屈ではない不思議な思いだ。

その女子高生の子も、中2で初めて会ったとき、意味もなく、この子はこのまちにとって、世の中にとって、とても大事な役割を持って生まれてきたのかなと感じた。高校に入ってからはまったく会うことはなかったけれど、ときおり知り合いから漏れ聞く近況で、元気にやっているとわかってうれしかった。

本音の志望校

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そんなある秋のこと、そろそろ大学受験で大変だろうなと思っていると、知り合いから「娘がまったくやる気をなくしているから、もし機会があったら励まして欲しい」といわれた。ちょうど、その前からちらちらと娘さんのことが頭に浮かんでくるので、なにか自分が会ってヒントになることでもあればと思いお家を訪ねてみた。

知り合いによると、先生からはある県外の公立大学なら成績的にも合格できるといわれているらしい。でも、本当の志望校は違って、今の成績からいえばほぼ無理だが、関西のある難関大学に行きたいのだとか。

実際娘さんに会ってみると、以前のような元気で活発なエネルギーはかげっていて、すっかり受験のやる気が失われているのがわかった。「どうせ」とか「これでいい」とか消極的な言葉ばかりが出てくる。それでも、本当は自分の才能や将来の仕事のため、本音の志望校が気になるのだとういう。

「もう地元の大学にしたら? ねえ、お母さん」

「そうよ!通学用に新車買ってあげるから!そしたら県外に出すより全然お金掛からないわ!」

「地元はイヤ!県外じゃないと・・・・・・」

といったように、マイナスの本音も知り合いとタッグを組んで突っつきながら、相談にのっていく。

丁寧に話を聞いてみると、数学と社会系の科目が足を引っ張っていて平均点にも達するかどうからしい。その他の教科は本音の志望校に何とか付いていけるだけの成績はとっているとのこと。

受験生にとって安全を取るかチャレンジを取るかは、人生を左右する重大な分かれ道だ。ただもともと部活で推薦の話もあったのを蹴って、一般入試でがんばりたいと受験を決めた子だ。志望校はギリギリでも変えられるのだから、とにかく応募のデッドラインまで本音の志望校に向けた受験勉強をするべきだと伝えた。そうしないとモチベーションが下がって、今安全といわれている大学すらリスクが高くなるからと。

高校での進路指導を聞いてみると、まったく私の受験時代と変わっていないのに驚いた。定期テストと模試の成績だけで志望校に受かる可能性を低く低く見積もっている。当然、本人がどういう将来を考えているかまではなかなか把握するのも難しいだろう。10代の受験生にとってその大学を受験した志望動機など単純なものだ。偏差値がマッチしたから。友達が行くから。東京にあこがれていたから。先生に勧められたから。などなど。

ただ、彼女の本当の気持ちは何よりも「神戸で暮らすこと」だった。したがっていくら安全圏の大学がほかにあるとはいっても、神戸や大阪などからまったく離れたまちへの進学を進めても、入学後「やっぱり違った」と後悔する可能性は高くなる。

神戸で暮らしたいなら、神戸周辺の大学にはどのようなところがあるか、神戸で進学できなくても、神戸に住んで大阪や京都、奈良に通うという手もあるのだから。

ささやかな受験相談会

ちょうど、知り合いのお家を訪ねた日は、私が関西を旅して帰って来たときだった。最終日は神戸で宿泊していたので、ロビーにあった観光パンフレットを山のように持ち帰り、どさっと彼女の前に置いた。とにかく神戸で暮らしたらどういう日常風景になるのか、彼女のイメージをふくらませた。受験が終わるまでは机の前に神戸の写真や地図を貼って、毎日勉強する前にパンフレットを眺めるように伝えた。

さらに、アウトプットの重要性もかみ砕いてアドバイスした。国公立大学の受験を左右するのはセンター試験だ。高校では模試でセンター試験の形式の問題を解いたことはあるけれど、過去問はまったくやっていないという。それに、志望校の大学案内や赤本も知らない。そこで、明日すぐ進路指導室に行って、苦手な数学のセンター試験の過去問を数年分コピーしてとにかく解いていき、間違った問題だけ教科書や参考書に当たったり、先生を捕まえて聞き倒すようにアドバイスした。大学の試験形式や過去問にも触れるように伝えた。

これが高3の春なら、まだ教科書の最初のページからゆっくりと流していくこともできる。しかし、基本的に塾を使わずにあと2ヶ月で受験するということなので、とにかく効率を突き詰め、優先順位のトップのことだけをやれと。社会系の科目も年明けまでやるな、数学だけやれ、と。

『逃げ切り型』は大人に理解されづらいので

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彼女のたぐいまれな集中力とポテンシャルなら、この話の時点で手が届かないといわれていた本音の志望校にもなんとか食らいつけるのではないかと信じている。それに、ウィークポイントの数学をバカになるほどやり倒せば、その勢いでセンター試験直前に社会系科目を詰め込んでも十分対応できるだろうと。もちろん、詰め込めきれないかもしれない。しかし、可能性を切り捨てていって、そのときの一番の道筋を走り込んでいくしかないのだから。

高校の先生も、塾に行く生徒が大半だろうし、忙しくて生徒一人一人の本音までつきあう余裕はないのが実状だろう。だからといって親では距離が近すぎて子供が素直に話を聞いてくれるとは限らない。たまたま、その知り合いの思いを代弁してくれるのに都合がいい相手として私が選ばれたにすぎない。

2017年のセンター試験は1月14日、15日。遠くから、その女子高生の健闘を信じつつ、年の暮れを迎えている。